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【IT担当者必見】企業別ERPパッケージの強みと弱みを比較して解説!

おつかれさまです、猫田です。

DXが求められる今、基幹業務システム刷新のため各社の製品を調べることを求められ、どこから調べればよいのか途方に暮れているIT担当者も多いかと思います。逆にその製品を販売する営業担当者の方でも他社製品の情報が少なく、どのようにアピールすべきか迷われている方も多いのではないでしょうか。

「DXを進めたいのになぜ今ERP?」と思った経営者もいるかもしれません。
DXを進めるには、ただIoTやRPAを導入するのではなくそのデータを有効に活用するために、しっかりとしたIT基盤を築くことが重要です。そのため、企業において最も重要となる基幹業務の統合管理システムであるERPシステムをうまく活用する必要があります。ERPの考え方自体は日本でも1990年代には入ってきており新しいものではありませんが、DXを進めるためには理解をしておくことが必要です。

この記事では、ERPパッケージについて国内外問わず各企業の製品を紹介します。
各製品の強みと弱みをはっきりと記載させていただきますので、製品選定に役立たせていただけばと思います!

※ERPの紹介は各ERP製品を提供する企業のサイトが多く、客観的な比較がされていない印象があります。筆者自身はSAPの経験があるため知識の偏りはありますが、経営や営業には携わっていないので正直このブログでSAPの導入に誘導しようというつもりはありませんのでご安心ください。

ERPとは

まずERPについて簡単に説明します。

ERPとはEnterprise Resource Planning(企業資源計画)。企業の経営資源(人・物・金・情報)を総合的に計画・管理し、経営の効率化を図るという考え方です。

ERPを実現するために必要とされるのが、各種業務(製造管理・販売管理・在庫管理・財務管理・人事管理)を統合したシステム「基幹業務システム」であり、このシステムは「ERPシステム」とも呼ばれます。

ERPシステムを利用するためには、①新規開発をする、②既に開発されパッケージ化されたシステムを導入する、という大きく二種類があり、②で導入されるシステムが「ERPパッケージ・ERP製品」と呼ばれます。(基幹システムを完全に新規開発するという企業は現状多くありません。コストが高く品質も低くなりがちなので、よほどの理由がない限りERPパッケージを使用する方が良いでしょう。)

ERPパッケージを提供する企業は様々でその製品はとても多くなっています。しかし1企業で使用しているERPパッケージは基本的に1つ、部分的に使用している場合でも2~数種類と限られるため製品名で呼ばれることもあり、そのため時折誤解を生みだしています。「SAP」「Oracle」「オービック」などはERPパッケージを提供する企業ですが、その製品(ERPパッケージの一つ)のことを指して使用される言葉でもあります。

ERPについての説明は以上です。

ERPという考え方を実現するためのERPシステム、それが製品化されているERPパッケージを提供している企業がSAPやOracle、オービックに代表されるIT企業です。

この記事では、そんなERPパッケージについて、その企業ごとにどのような製品を提供しているかを分かりやすくまとめて、それぞれの特徴を含め紹介します!

ERPパッケージを比較するポイント

システム導入のための製品選定では、各社重視するポイントは異なります。
しかしERPパッケージを選定するうえで最低限押さえておくべきポイントは「得意な領域」と「価格帯」です。

「得意な領域」について…

統合基幹業務システムのため幅広い業務に対応できるシステムになっている製品がほとんどですが、各製品で特に力を入れている業務領域は異なります。「カバーはしているけど実はこの領域は苦手」ということは往々にしてあり、ベンダーからの提案においても「この領域は別企業の製品にしたほうが…」「ここの業務システムは継続使用した方が…」となることは珍しくありません。そのためシステム刷新においては、確実にスコープに含めたい領域をはっきりさせてそれに合った製品を選ぶことが重要です。

そこでこの後の製品紹介では、各製品が得意とする領域を記載しています。

「価格帯」について…

実際の価格は使用するデータ量や導入する領域、PJの期間など様々な情報を提供して、見積をしないと分かりません。また、導入時にかかるイニシャルコストだけでなく、稼働してから発生するランニングコストを加味して検討する必要があります。しかし、おおよその価格帯を知っておかないと自社に見合わない製品の情報収集をしてしまい時間を無駄にすることにもなりかねません。

そこでこの後の製品紹介では、大企業向け・中堅企業向け・中小企業向け、どれにあたるのかをお伝えします。(実際の金額について、公開されていない・されていてもIC/RCの関係で誤解を生みやすいため、この記事でも記載しません)

企業別ERP製品の紹介

それでは、各社から提供されるERPパッケージを企業別に紹介します。

SAP

公式HP

SAP(エスエイピー)はドイツに本社を置くビジネス向けソフトウェア会社です。日本法人はSAPジャパン。ERP製品の世界シェア1位であり、国内シェアは調査機関によってばらつきはあるもののどの調査でも1~3位には入っている非常に有名な製品になっています。
提供するソフトウェアは多岐にわたりますが、その中核となるERPパッケージを2点ご紹介します。

SAP S/4HANA(SAP)

対象:大企業
知名度:S
特徴:

SAP S/4HANAはSAP ERP(ECC)の後継製品として提供されるERPパッケージです。(前身であるSAP ERPは2027年にサポートが終了しますので、使用している企業はそれまでに後継の当製品にコンバージョンするか他製品に乗り換える必要があります。)従来のオンプレミスの他、クラウドで利用できる「SAP S/4HANA cloud」も提供されています。

財務会計・管理会計などの会計領域、生産管理・在庫/購買管理・販売管理というロジスティクス領域、その他に人事管理や経営分析など主要な業務をもれなくカバーされています。また、製造元がヨーロッパの企業ということもあり海外対応に優れている点も強みです。

強みは様々な業種に対応できる豊富な機能と高い品質。その他の周辺システムも多数用意されているため機能面で明らかに劣るケースはあまりありません。一方弱みは単純で価格の高さ。また製品比較をする際には何かの業務に特化した他製品にどこまでついていけるか、という点で比較されることの多い製品となっています。

SAP Business ByDesign(SAP)

対象:中堅企業
知名度:A
特徴:

クラウド型のERP製品であり、大企業向けのイメージがあるSAPが提供する中堅企業向けのERPパッケージとなっています。

SAP S/4HANA同様に財務、販売、購買などの主要業務をしっかりとカバーしており、海外展開にも強いのが強みです。
では、フラグシップモデルのSAP S/4HANAから何をそぎ落としたのか。
クラウドでのサービスに絞ることで導入コストを削減している点、連結会計など子会社対応をしていない点(1社のみまたは子会社での使用を想定)、がコスト削減の主な要因です。

SAP Business One

対象:中小企業
知名度:A
特徴:

オンプレミスまたはクラウドで利用することが可能なERPパッケージです。

財務会計、販売管理、在庫/購買管理、生産管理、顧客管理などの主要業務に対応しています。導入が短期間かつ低コストで行えるということもあり、ビジネスの成長に応じて必要な機能を拡張できるようになっています。

ByDesign同様に1社のみの企業や子会社での使用を想定してつくられており、社内向けに経営に活用するための“管理会計”の機能もそぎ落とされているためS/4HAMAよりも低価格での提供が可能となっております。(財務諸表等をつくる“財務会計”の機能はカバーしています)

Oracle

公式HP

Oracleはアメリカに本社を持つソフトウェア会社です。日本法人は日本オラクル。
日本ではSAPや国内製品に後れを取っているものの、世界ではSAPに次ぐ第二位のシェアを誇っています。同社はデータベースが最も有名であり、単に「オラクル」というときにデータベースを指していることも多いです。

ERP製品の強みは様々な業種に対応できるカバー率の高さです。一概には言えませんが、競合であるSAPと比較すると、「価格は抑えられるものの機能面ではやや見劣りする(コスパが良い)」という立ち位置で比較されることの多い製品となっています。また、クラウドサービスへ大きく舵を切っているのでその点は良い意味でも悪い意味でも抑えておく必要があるでしょう。

Oracle Fusion Cloud ERP

対象:中堅企業・大企業
知名度:A
特徴:

オラクルERPのフラグシップモデル。
名前の通りクラウドで利用する製品となっており、同社の大企業向けERP「Oracle E-Business Suite」、中堅企業向け「Oracle JD Edwards EnterpriseOne」(いずれもオンプレミス型)からの乗り換えを推奨されています。

財務会計、管理会計、購買管理、サプライチェーン管理など、主要業務を幅広くカバーしています。SAP同様、海外展開にも強みがあります。

Oracle Netsuite

対象:中小企業・中堅企業・(大企業)
知名度:S
特徴:

クラウドで利用されるERPパッケージ。
大企業まで使用できるとされていますが、どちらかというと小規模な企業向けのERPパッケージとなっています。

会計管理や生産管理なども含め広くカバーしますが、特にCRM・Eコマースに力を入れており、基幹業務システムではありますがやや特化型の製品と言えます。海外展開への対応はFusion Cloud同様に強みです。

Microsoft

公式HP

Microsoftはアメリカに本社を置くソフトウェア会社。日本法人は日本マイクロソフト株式会社。企業としての認知度も高く、同社が提供するERPパッケージ「Dynamics 365」は2008年に発売された比較的歴史の浅いパッケージでありながらも知名度としては高いものになっています。

Dynamics 365

対象:中堅企業・大企業
知名度:A
特徴:

Microsoft Dynamics 365とは、マイクロソフトが提供する基幹業務アプリケーションの総称となっており、クラウド型とオンプレミス型が用意されています。日本でのシェアはそこまでですが、世界でのシェアは高く、SAPやOracleには届きませんがおよそ5位に位置しています。

財務管理やサプライチェーン管理、人事管理といったERPソリューションと、マーケティング、営業支援、カスタマーサービスといったCRMソリューションからなるシステムになっています。特に顧客関係管理(CRM)と営業支援(SFA)に力を入れたシステムとなっています。

ビジネスの場でなくてはならないWordやExcelといったOfficeシステムとの親和性が高いのが強みです。また同じ海外大手のERPパッケージであるSAPと比べ価格が低いパッケージとして認知されています。一方で弱みは、日本での導入実績の少なさに加え、機能がないわけではないものの生産管理や在庫管理の機能が不足している点が挙げられます。

オービック

公式HP

オービックは東京都に本社を置く日本発のシステムインテグレーター企業です。
主力製品はERPパッケージのOBIC7。「○○奉行」でおなじみの奉行シリーズは必要に応じて部分的に使用されることも多く非常に有名です。

日本発の企業ともあり日本でのシェアは高め。調査機関によって差はありますが、5~10位あたりに位置します。ERP製品として圧倒的な位置を築いているわけではありませんが、オービック自体の売り上げはここ数年順調に伸びてきています。

Obic7

対象:大企業
知名度:A
特徴:

会計管理の他、販売管理・プロジェクト収支管理・契約管理・生産管理などをカバーしています。Obic cloud7というクラウド製品もあります。

強みは日本企業であるための日本の商習慣や独自の仕様に適合したシステムであること。弱みは基幹業務システムとしてのカバー率で、購買管理や在庫管理のカバーにやや不安があります。主要業務をシステムで一元管理しようとする場合は要注意です。

また、同社の「奉行シリーズ」は中小企業向け業務パッケージですが、Obic7との連携も可能です。給与計算システムの「給与奉行」、年末調整・法定調書作成システムの「法定調書奉行」、固定資産管理をする「固定資産奉行」など、主要なものからニッチなものまで柔軟にカバーすることができます。

富士通(FUJITSU)

公式HP

富士通はご存知の通り日本のエレクトロニクスメーカー兼ITベンダー。

富士通のERPパッケージは「GLOVIA」。日本国内では中堅企業を中心に高いシェアを誇るERPパッケージであり、調査機関によってはシェア1位とされています。
国内シェアは高いものの、SAPやOracleといった海外で主力となるERPとは特徴が大きく異なるため、単純な価格比較ではなく機能面での差異を見出しやすい製品でもあります。

GLOVIA iZ(富士通)

対象:中堅企業
知名度:A
特徴:

「GLOVIA iZ(グロービアアイズ)」は、日本でのシェアが高いERPシステムであり、FUJITSUが「次世代ERP」と位置付けるフラグシップモデルです。

会計管理、人事管理、販売管理、生産管理を中心としたERPシステムであり、「経営」「会計」「人事給与」「就業」「販売」「貿易」「生産」の7つを基幹業務と位置付けています。

高い完成度と豊富な実績、そして「国産ERP」であるが故の日本の商習慣への柔軟な対応です。弱みとしては海外対応と、日本産ERPに共通することですが購買・在庫管理の位置づけの甘さからくる機能不足が挙げられます。

NEC

公式HP

ご存知の通りNEC(日本電気株式会社)は日本を代表する電機メーカー。
NECのERPパッケージは「EXPLANNER/Z」。国内では人気のある製品となっています。

EXPLANNER/Z

対象:中小企業・中堅企業・(大企業)
知名度:B
特徴:

「EXPLANNER/Z」は国内のERPシェアで10位以内に入る人気のあるERPパッケージであり、EXPLANNER/AやEXPLANNER/Aiの後継製品となっています。

販売管理システム・生産管理システム・原価管理システム・在庫管理システム・会計システム・債権システム・債務システムからなるERPシステムになっています。なお、購買がないと思われるかもしれませんが販売管理システム内に受注管理の他に仕入等の購買管理も含まれています。

強みは幅広い業務をカバーしている点で様々な業態・業種に対応することができます。一方で弱みはシステムの操作性の悪さや不具合の多さが挙げられます。

日立システムズ

公式HP

日立システムズは日立グループのメーカー系システムインテグレーター。
国内で10位以内に入るシェアを誇るERPパッケージ「Future Stage」を提供しています。

Future Stage

対象:中小企業・中堅企業
知名度:B
特徴:

生産管理・販売管理を中心にしたERPシステムとなっています。導入型(オンプレミス)とクラウド型があります。特にクラウド型は稼働の早さを強みとしており、最短10日から利用開始できると謳っています。業務別のテンプレートを用いた導入になると予想されます。

弱みとしては、財務管理がオプション機能とされていること。当社からの資料でも財務データ連携には、「勘定奉行」や「superstream」といった他社システムを使用する旨が記載されています。

生産管理や販売管理のシステム刷新が必要で会計システムについては既存のものを使用したい場合の、製造業向けのERPパッケージと言えるでしょう。

大塚商会

公式HP

大塚商会はシステムインテグレーション事業を展開するIT企業であり、大塚ホールディングス(大塚製品・大塚食品)や大塚家具とは特に関係のない企業です。日本の中小・中堅企業で使用されるERPパッケージで高いシェアを誇るSMILEシリーズを提供しています。

SMILE V 2nd Edition

対象:中堅企業・大企業
知名度:A
特徴:

オンプレミスで提供される大塚商会のERPパッケージ。クラウド版としてSMLIE V Airという製品も提供しています。

SMILE V 2nd Editionは販売管理、会計管理、人事管理、CRMといった基幹系システムから成るERPパッケージとなっています。生産管理等については「Fu-jin生産革新」など他パッケージでカバーすることが可能です。

強みとしては電子申請や承認システムといったワークフロー機能が充実していることなど、日本のビジネスに適したシステムとなっている点が挙げられます。一方で弱みとしては2022年にリリースされたばかりであり、人気のSMILEシリーズとはいえど使用実績が少なく不具合等が予想される点です。気になる製品ではありますが、どんな製品であっても初期リリースは不具合がつきもののため2022年現在は若干時期が悪いと言わざるを得ないでしょう。

まとめ

この記事では、代表的なERP製品について企業別に紹介しました。
それぞれの製品の強みと弱みを紹介しましたが、海外製品と日本製品ではおおむね以下のような違いがあります。

SAP、Oracle、Microsoftといった海外企業の製品は、海外展開に強い点、その市場規模の大きさと豊富な開発リソースに由来する製品の質の高さが主な強みです。

オービック、富士通、NEC、日立システムズ、大塚商会といった日本勢は、日本国内の商慣習(ローカルルール)に適したつくりになっていることが強みです。

また、一部のシステムは基幹業務すべてをカバーしているわけではないこともあるため、どの領域をカバーしているのか(得意としているのか)を確認し、自社とあっているかを確かめる必要があります。

参考になれば幸いです。

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